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志手研究室
2026/02/16
【表彰】定松恵斗さんが日本コンストラクション・マネジメント協会 第5回学生エッセイコンテストにて優秀賞を受賞しました
日本コンストラクション・マネジメント協会 第5回学生エッセイコンテストにて、修士1年の定松恵斗さんが優秀賞を受賞しました。
【受賞者】定松恵斗(修士課程)
【指導教員】志手一哉教授(建築学科)
【協会名】日本コンストラクション・マネジメント協会 第5回学生エッセイコンテスト
【賞名】優秀賞
【題目】人の奥行を読む~グローバリズムと分断の狭間で~
【内容】
フィンランドでの留学中、とにかくグループワークが多く、たとえ専門が同じでも国籍や教育背景が異なるメンバーが集まるので、初回の議論から意見がまったくまとまらなかった。加えて、専門分野が異なる学生との横断的なコラボレーションも多かったため、苦労と楽しさが交差する環境の中に身を置いていた。文化や政治、宗教に対する考え方も違うため、あたりまえが通じない場面も幾度となくあり、発言にもかなり気を使っていた。
当時の私は、その摩擦を意思疎通の難しさだと捉えていた。しかし今振り返ると、あの混乱はまさにマネジメントの不在だったのかもしれない。背景や価値観の違いを理解せずに意見を主張しても、合意形成は生まれない。異なる国籍や環境のもとで育った人と関わるということは、その人の生き方の文脈を一つずつ紐解くことでもあった。時には言葉にならない価値観の違いを受け止めることで、初めて相手との信頼関係が生まれる。
マネジメントとは一概に定義できるものではない。それは、プロジェクトそのものや工程、コスト、契約など、ビジネスライクな領域にとどまらず、背景や文化、考え方、その「奥行」を理解することでもあるのかもしれない。
相手を知ろうとする姿勢の中にこそ、協働の土台がある。マネジメントの父・ドラッカーは「マネジメントとは人のことである」と残している。もし当時、その捉え方を理解していたら、もっと相手の思考を尊重し、個々の個性をチームの力に変える方向で動けたはずだと思う。
国際化は進んでいる。違いが明確になる分だけ摩擦が増え、対立も生む。時に無意味な争いまでも。でも、それらはすべて我々「人」が生み出している。だからこそ、理解しようとするのもまた人である。
私の思うマネジメントとは、摩擦をなくすことではなく、それを受け入れ、意味あるものへと変えていく力だと思う。違いを恐れず、その奥行を知ろうとする姿勢こそが、国際化の時代を生きる私たちに求められる「人の技術」、すなわちマネジメントの視点なのではないだろうか。
ただ、この態勢を己に刻み、机上の理解を実感値にするのは、時間も精神も削れるものである。しかし、若いうちに痛みを伴ってそれを覚えた私は、きっと強い。この思いを、将来という不明確な未来(=プロジェクト)に向けて絶やさないことも、自分への奥行を読むという点で、マネジメントの一部なのだろう。