見学 小柏研究室
2025/10/09
COMICO ART MUSEUM YUFUIN(大分県由布)見学
文責:岩崎佑亮(修士2年)
COMICO ART MUSEUM YUFUIN
設計:隈研吾建築都市設計事務所
構造:RC造
所在地:大分県由布市湯布院町川上
開館:2017年(一期)、2019年(二期拡張)
延床面積:一期 647㎡、二期後は1,500㎡
外観と配置
建物は由布岳を望む農村景観の中に位置し、東西に長く伸びる敷地形状に沿って細長い平面計画が採用されている。外壁仕上げには焼杉が使用され、湯布院の町並みや山並みに調和するように配慮されている。建物の軒高は抑制され、低層で水平性の強い外観は、風景と連続するような印象を与えている。
また、外部からの見え方は意図的に控えめで、観光地でありながら道路からは大きく主張しない。建物全体が黒い石と木材によって構成されているため、周囲の田園風景や樹木と調和し、あたかも土地の一部として存在しているように見える。
アプローチと動線計画
来館者は石塀に沿った小径を通り、徐々に建物の内部へと誘導される。入口に至るまでのプロセスは直線的かつ単純でありながら、壁によって視界を制御されることで、内部への移行感が強調されている。
内部動線は一期部分では一本の廊下を軸にして展示室を連続させる構成であり、二期増築後には環状に近い経路が追加されている。これにより、単一方向の巡回だけでなく、複数の経路を選択できる柔軟な回遊性が生まれている。
展示室の空間性
展示室は白と黒を基調とした無装飾の空間で、天井高は抑えられており、均質なスケール感が維持されている。外部開口は最小限にとどめられ、展示室の多くは人工照明と間接光によって制御された均一な明るさを保つことで作品の存在感を際立たせている。
また、中庭に面する展示室では大きな開口が額縁のように外部景観を切り取っており、鑑賞者は作品と自然風景の両方を同時に体験できる。これは「展示室=閉鎖空間」という従来の形式に対し、外部環境を積極的に組み込んだ設計となっている。
光環境
建物内部の照明計画は、直接光を避け、地窓・トップライト・スリット状の開口を通して間接的に取り入れる手法が多用されている。これにより、展示空間ごとに異なる陰影が生まれ、作品の内容や展示形式に応じた柔軟な鑑賞環境が実現されている。特に光庭から入る自然光は、季節や時間によって変化し、展示空間に微妙な表情を与えている。
参考文献
・“COMICO ART MUSEUM YUFUIN.” Kengo Kuma and Associates. https://kkaa.co.jp
・『新建築』新建築社, 2017年10月号.
・“COMICO ART MUSEUM YUFUIN.” 一般社団法人 日本建設業連合会.