見学 小柏研究室

2023/08/09

新宮熊野神社(福島県喜多方市・国指定重要文化財)見学

文責 新村恵太(学部4年)

 

〇神社の沿革

新宮熊野神社は前九年の役後に陸奥征討に赴いた源頼義、義家父子が武運を祈って河沼群熊野堂(現在の河沼郡河東村熊野堂)に勧請鎮座したことから始まるとされている。その後、後三年の役で再び義家が訪れた際に現在の場所に遷宮をした。

 

〇拝殿(長床)概要

建立 鎌倉前期

構造形式

桁行九間(27.27m)、梁間四間(12.12m)、一重、寄棟造茅葺、四面開放

 

 

ピロティの形式を持った長床は一層の建物であるが四面開放の造りで、桁行九間、梁間四間の丸柱で支えられている。現在の建物は慶長に再建されたもので、以前のものは柱間が一回り大きいものであった。他にも数度の改変を受けており、かつては祭器庫が設けられていたこともあったため土壁や板壁、戸口、蔀戸がついていた改変もあった。

 

〇所見

鳥居をくぐった先の参道を歩くと大きな銀杏の木に隠れた長床が現れる。写真や図面で見るよりもかなり迫力があった。

全面が吹き放ちの建物は壁がないため水平力を負担するものがなく構造的に不利な部分が多い。その部分を克服するためにも1尺5寸(約45cm)の太い柱を用いることで安定性を持たせ、また頭貫の下に柱に巻き付くように大きな長押をつけることで柱を固めるような工夫がされていた。

壁や建具がないため長押が挟み込まれて固定されているところを見ることができ、さらに中央部にも明かりが入るため、部材が見やすくひとつひとつに着目しながら力の流れ方を見て学ぶことができ勉強になった。

 

 

 

珍しい形式を持つ建築で前から訪れたいと思っていたところであったが、実際に訪れて想像以上に美しいものを見ることが出来たのがとても良かった。

 

 

〇参考文献

財団法人 文化財建造物保存技術協会『重要文化財熊野神社長床修理工事報告書』昭和49年(1974年)