見学 小柏研究室

2025/09/17

別府市公会堂(大分県別府市・市指定有形文化財)見学

文責:新村恵太(修士2年)

 

竣工:昭和3年(1928)

設計:吉田鉄郎

構造:RC 造、地下1階地上2階建て

文化財:別府市指定有形文化財(1994)

    DOCOMOMO 選定(2012)

 

 

 現在は別府市公民館として活用されており、建設当初は別府市公会堂として使われていた。設計は近代ヨーロッパ建築に詳しい吉田鉄郎氏で、近代ドイツ復興式を参考に設計した。吉田鉄郎氏の代表作として、東京中央郵便局(現:KITTE)、大阪中央郵便局、別府市公会堂と同時期の作品として、京都中央電話局(現:新風館)がある。

外観は黄土色のスクラッチタイルを前面に貼り、5連アーチの開口部、正面に石造の大階段がある。正面玄関扉を入ると、六角形のモザイクタイルの床、青のタイルが貼られた壁面、天井の高い玄関ホールがある。

 

 

そのまま正面に進むと大ホールがあり、当初の公会堂としての面影を感じることができた。1階の廊下は漆喰を基調にアーチの梁型、2階の廊下は梁型を用いずに平天井とし、1階と比較すると開放的な空間を作っていた。玄関、1階廊下、2階廊下のそれぞれで、星形をモチーフとしたデザインが異なる照明を用いている点も特徴的だった。

 

 

この建物は、昭和24年(1949)に公会堂から公民館へと用途を変え、昭和43年(1968)に漏水と地下の湿気除去を理由に、正面の中央玄関の大階段を撤去した。当初の設計図書が残されていたこともあり、平成28年(2016)の改修時に大階段や、照明の復原などを行い、竣工当初の姿に戻された。

 この建築の特徴である大階段や中央玄関は、バリアフリーの側面から使われていなかったが、そのほかの会議室や大ホールなどは現在も公民館として使われているのが印象的だった。実際に訪問して近代化遺産が現在も利用されているところを見て、文化財として適切な在り方であり、市民にとっても重要な存在であると感じた。

 

 

 

参考文献

別府市教育委員会『べっぷの文化財 No.38』(平成19 年)

DOCOMOMO JAPAN https://docomomojapan.com/structure/152/(2024.9.3 閲覧)