見学 小柏研究室

2025/09/04

びわ湖大津館(滋賀県大津市・市指定有形文化財)見学

文責:岩崎佑亮(修士2年)

 

概要
建設:1934年(昭和9年)
構造:鉄筋コンクリート地下1階地上3階建
所在:滋賀県大津市大津市浜大津5-1-1


びわ湖大津館(旧琵琶湖ホテル本館)は、1934年(昭和9年)に外国人観光客の誘致を目的として建設された建物である。当時、国は国際観光振興を目的として全国の有名観光地にホテルの建設を進めたが、現存するものは極めて少ない。

設計は、東京歌舞伎座や明治生命館の設計で知られる岡田建築事務所(岡田信一郎創設)によるものである。開業当時から「湖国の迎賓館」として昭和天皇をはじめ多くの皇族、ヘレン・ケラー、ジョン・ウェイン、川端康成など各界の著名人を迎え入れ、名実ともに県下唯一の格式を持つホテルとして営業していた。

1998年(平成10年)に琵琶湖ホテルが浜大津へ新築移転することとなり、旧建物は取り壊しの危機に直面した。しかし保存を求める市民の声に応え、大津市が敷地ごと買収し、大規模な補強・改修工事を行った。その結果、2000年(平成12年)に大津市指定有形文化財に登録され、2002年(平成14年)から多目的文化施設「びわ湖大津館」として新たに開館している。

 

所見

びわ湖大津館は鉄筋コンクリート造地下1階・地上3階建であり、和風の外観と洋風の内観を併せ持つ「桃山様式」と称されるデザインを特徴とする。その意匠は琵琶湖の景観や古都大津の風土と調和している。特に1階の「桃山」は格天井を用いた桃山風の意匠で、落ち着いた雰囲気を備えた食堂として利用されていた。

見学においては、改修工事を契機に明らかとなった「繰型出組」による装飾技法が印象的であった。外側の回廊を一階から見上げると、天井部分には型枠に詰め込んだモルタルを接合して造形された意匠が確認でき、当時の高度な施工技術を示している。

さらに、一階の一部には当初からの木製窓枠が現存しており、保存状態の良さがうかがえる。これらは建物の歴史的意匠性を伝える重要な要素である。また、床仕上げとしては小さな木片を組み合わせた寄木張りが特筆され、ロビーでは補修・復元が施されているほか、二種類の木材を組み合わせた寄木張りも確認された。

 

 

 

参考文献
・びわ湖大津勘HP https://www.biwako-otsukan.jp/  閲覧日9月1日