見学 小柏研究室

2022/02/22

鹿島神宮(茨城県 鹿嶋市・国指定重要文化財)見学

文責:横溝将也 (学部4年)

 

鹿島神宮の概要

 鹿島神宮の御祭神は武甕槌命(タケミカヅチノミコト)であり、茨城県の南東部、鹿島郡鹿島町のほぼ中央に位置しています。本殿・石の間・幣殿・拝殿、仮殿、摂社奥宮本殿や楼門が国指定の重要文化財に登録され、飛地の坂戸神社や鹿島郡家跡などを含めた境内全体が史跡に指定されています。

 

歴史

 創立は古く、すでに「常陸国風土記」に記載があり、下って神護景曇2年(768)に、藤原氏により春日大社に勧請され、四殿中の第一殿に奉斎されました。慶長9年(1604)には、徳川家康により本殿(現・摂社奥宮本殿)が建立されました。元和4~5年(1618~1619)には、徳川秀忠により拝殿・幣殿・石の間・本殿と仮殿が造替され、それに伴い旧本殿(現・摂社奥宮本殿)は現在の地へ移築された。楼門は、寛永11年(1634)に徳川頼房が再建しました。

 

所見

 大鳥居をくぐり100mほど歩くと楼門が見えます。三間一戸の八脚門で日本三大楼門の一つに数えられます。以前の屋根は桧皮葺でしたが、修繕の際に銅板葺へ変わりました。総朱漆塗の外観が特徴的で欄間などに彩色を施す控えめな意匠で統一されており、堂々とした構えに圧倒されました。細部に着目すると木鼻や虹梁の渦紋や欄間の雉と松の彫刻が控えめながら繊細で美しいです。

南側からの楼門(筆者撮影)

 

 楼門を過ぎ、右手に拝殿が目に入り、その背後に幣殿・石の間・本殿があります。拝殿の木部の多くが白木であり、質素な印象を受けますが、妻飾りや蟇股の彩色が美しいです。蟇股は獅子や植物の透かし彫りが施され、本殿は組物、頭貫や虹梁などに彩色、妻飾りの黒漆や金箔押などが施され、非常に華やかな印象を受けました。本殿の妻飾りは黒漆塗で拝殿の朱漆塗との対比的です。石の間は工事の囲いのため屋根や組物など一部しか見ることはできなかったのですが、組物や柱など華麗な極彩色が施されていました。

西側から見た拝殿(筆者撮影)

本殿北側の組物周辺(筆者撮影)

 

 拝殿から参道を挟んだ位置に仮殿があります。仮殿は、本殿造替時に御祭神を仮に祀るための建物です。蛙股のみ彩色、全体に黒漆塗が施され、厳かな印象を受けました。蟇股は、拝殿の獅子のモチーフとは異なり、鶴や孔雀といった鳥をモチーフで緑青塗など彩色が施されています。

南側から見た仮殿(筆者撮影)

仮殿南西面の蟇股(筆者撮影)

 

 奥参道を進み、右手に奥宮本殿が視界に入ります。見学当時は屋根や木部の修理工事が行われており見学ができず残念でしたが、正面に一間の向拝を有する三間流造の建物です。鹿嶋市によると和様を基調として蟇股や手挟などに彫刻を施しています。また、木割りが大きく、蟇股や木鼻の彫刻に桃山時代の気風をうかがうことができます 

奥宮本殿(茨城県教育委員会HPより引用)

                 奥宮本殿(茨城県教育委員会HPより引用)

 

参考文献

1)    財団法人文化財建造物保存技術協会

   『重要文化財 鹿島神宮本殿・石の間保存修理工事報告書』真陽社 平成元年

2)    田中淡『茨城県文化財鹿島神宮仮殿修理工事報告書』佐原印刷株式会社 昭和50年

3)  茨城県教育委員会 2月13日閲覧

  https://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/bunkazai/kuni/kenzou/1-1/1-1.html