見学 小柏研究室

2021/12/03

新潟県政記念館(新潟県 新潟市・国指定重要文化財)見学

文責: 山田悠太(修士1年)

 

沿革

新潟県政記念館は、明治16年(1883年)に新潟県会議事堂として建設され、昭和7年(1932年)に新設の県庁舎内に議場が移されるまで、県政審議の場として使用されました。その後は新潟県郷土博物館となっていましたが、昭和18年(1943年)に旧海軍の宿舎、戦後に県庁舎の分室となりました。昭和44年(1969年)、明治の府県会開設期における現存唯一の議事堂の遺構として、重要文化財「新潟県議会旧議事堂」に指定されました。大規模解体修復工事を経て、昭和50年(1975年)から「新潟県政記念館」として公開されています。

 

建築概要

建設地は、火災の心配がなく、新鮮な空気に富んだ信濃川に臨む河畔の白山公園隣接地が選ばれました。当時は信濃川の川幅が現在より広く、建物のすぐそばを川が流れていました。また白山公園は、明治6年(1873年)に開設された日本で最初の公園の一つです。

建設には、新潟県出身の大工棟梁・星野総四郎が設計監督として起用されました。この建物は日本の伝統的な木造建築に西洋建築の技術・意匠を取り入れた木造洋風建築で、中央に八角塔屋がのせられた左右対称の構造となっています。

 

所見

建物を訪れると、洋風の外観に目を奪われました。中央の八角塔や2階前面のベランダが特に目立ち、洋風であることを強調していました。壁面は漆喰塗りですが、隅と窓枠には石のタイルが張り付けられ、石積みに見えるような装飾となっています。この白い壁と石積みの装飾によって、この建物を洋風建築であることを全体に印象付けていると感じました。

外観1 八角塔屋、ベランダ、石タイル

 

一方で細部を見ると、軒周りの蛇腹(じゃばら)、両翼の棟端の擬宝珠(ぎぼし)形の妻飾りや破風板の刳形(くりがた)など、和風装飾が随所に見られます。洋風建築としての印象を崩さない範囲で伝統的な意匠を組み込み、調和させていることに感心しました。

外観2 蛇腹、妻飾り、破風板

 

内部には、議場を始め、知事室、議長室、委員室など14の部屋が備わっています。西棟は議場、東棟は各控室、中央棟は管理部門として区別され、使用されていました。目玉である議場は最も広く、高い空間で、当時の机やイス、氏名標が配置されており、かつて審議の場として使用されたことを実感させる厳格な雰囲気を保っていました。

『重要文化財 新潟県議会旧議事堂修理工事報告書』(昭和49年3月)より引用

   上記図版は『重要文化財 新潟県議会旧議事堂修理工事報告書』(昭和49年3月)より引用

 

 

参考

・[新潟県政記念館] -新潟県ホームページ-  2021/11/25 閲覧

 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/bunkagyosei/1196612167437.html

・新潟県政記念館 公式ホームページ  2021/11/25 閲覧

 https://niigata-bs.sakura.ne.jp/si/kensei/index.html

・『重要文化財 新潟県議会旧議事堂修理工事報告書』(昭和49年3月)

 発行:新潟県 編集者:財団法人 文化財建造物保存技術協会