見学 小柏研究室

2023/08/08

郡山市立美術館(福島県郡山市)見学

文責:森万佑子(修士1年) 

 

◯概要

所在地:福島県郡山市安原町大谷地130−2

設計:TAK建築・都市計画研究所  施工:大林・東洋特定建設工事共同企業体

敷地面積:187,000㎡  建築(延床)面積:4,322㎡(6,848㎡)

構造:鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄筋コンクリート造

工期:1990年12月〜1992年6月

 

設計を担当したのは柳澤孝彦(1935-2017)である。郡山市立美術館は彼が竹中工務店設計部を独立後の2つ目の作品であり、第35回BSC建築賞や公共建築100選を受賞し代表作となった。その後の柳澤氏の主な作品としては、東京都現代美術間や新国立劇場など公共建築が多く挙げられる。

 

◯建築計画・設計手法

 郡山市内東部の丘陵地に新文化ゾーンを計画する「郡山風土記の丘応援建設構想」の中核施設として、当美術館の設計は始められた。

“人と自然が相互に深く呼吸し合う環境づくり”という意図を終始貫き、美術館単体のみならず緑豊かな広域空間のなかで“新しい環境としての風景”を作り出そうという考えを基本に、柳澤氏は自然と建築との調和を一番に考えこの美術館の設計にあたっている。敷地の谷部分に自然を極力傷つけない位置を見つけ計画地とし、傾斜するコンタレベルに各床を合わせた断面構成をとり、二つの棟がL字型に配置されている。L地形配置の内角には「石の広場」が設けられ、自然の軸と建築の軸を繋ぐ架け橋となっている。

 さらに建築素材もこだわり抜かれ、目地の異なるホワイトコンクリートと木、エッチングガラスの異なる素材を巧みに組み合わせることで、明るく豊かな空間を実現している。

 

 

◯所見

 駅から離れた雄大な自然の中にあり、実際に訪れた時には時間の流れがゆったりと感じられた。

100m近くあるプロムナードを歩いているうち、キャノピーと床面に水平に切り取られた視界で、自然の中から徐々に姿を現す美術館を眺めることで鑑賞の心構えが整えられていくようであった。水平性が強調されたプロムナードから館内に入ると、天井の高い開放的な空間が待ち受け、展示場への期待感が膨らんだ。さらに館内を南側奥に進みながら、エッチングガラス越しに外の石の広場と郡山の自然が見え隠れする光景を楽しんだ。一方で展示室内部は、四角く閉じられた空間に天井面から室ごと表情の違う柔らかな光が降り注ぎ、ゆったりと展示を楽しむことができた。

このように、柳澤氏によりランドスケープデザインとともに考え抜かれたシークエンスを実際に体感することができ、非常に感動した。彼の設計した、東京都現代美術館や他の公共建築にも改めて訪れてみようと思う。

 

◯参考文献

・新建築データ(掲載誌:新建築1993年1月号p163〜)

・郡山市立美術館HP / https://www.city.koriyama.lg.jp/site/artmuseum/

・柳澤孝彦+TAK建築研究所HP / http://www.tak-archi.co.jp/