見学 小柏研究室

2023/08/08

天境閣(福島県猪苗代町・国指定重要⽂化財)⾒学

⽂責:横溝将也(修⼠ 2 年)

 

概要
所在地:福島県猪苗代町翁沢御殿⼭ 1048-14
竣⼯年:明治 41 年(1908)
設計者:不明
施⼯者:遠藤組


沿⾰
明治 40 年(1907)に有栖川宮威仁親王殿下が東北を御旅⾏中、猪苗代湖畔を巡遊した際に⾵光の美しさを賞し、猪苗代湖を望む⾼台に御別邸の建設を決定されました。翌年 4 ⽉に起⼯し、同年 8 ⽉に竣⼯しました。昭和 21 年(1946)、天鏡閣内に財団法⼈英世学園⽇本国⺠学舎を開設し、その後湖畔聖書学校に転⽤され、昭和 26 年(1951)まで使⽤されました。⾼松宮宣仁親王殿下より、天鏡閣・和⾵別邸・敷地が福島県に下賜され、昭和 54 年(1979)に天鏡閣・別館・表⾨が国指定の重要⽂化財に指定されました。

建築概要
この建物は、ルネッサンスを基調とした⽊造⼆階建ての洋⾵建築です。屋根は天然スレート葺で⼋⾓塔屋付、東翼部を越屋根、その他を寄棟とし、外壁は横板張りペンキ塗り、窓は上げ下げ窓であり、変化に富んでいます。またゾーニングに関して、外広間から東⻄に伸びる通路によって、⾷堂・客間・球戯室の主要室と使⽤⼈室などのサービス関係の室で南北に分かれています。

所⾒
建物を訪れると、中央の塔屋、⽞関ポーチやドーマーに⽬が⾏き、印象的でこの建物の特徴を表す要素であると感じました。細部は、⽞関ポーチの柱やポーチ上部の繰り型、ベランダ以外には⾒られず、⽐較的おとなしい雰囲気でした。現在は塗装の劣化のため、アイボリ ーのような⾊合いだが、修復⼯事竣⼯直後はパステルブルーのような⾊合いでした。


⼀⽅で、内部は各室にカーテンやロールスクリーンなど 3 重が吊るされた窓廻り、暖炉、シャンデリアといった⾮常に華やかな印象を受けました。2 階の御居間・付属室・御座所の主要室は、⻘系の壁紙にピンクのカーペットという珍しい組み合わせであったが、家具類も合わせた全体は調和していました。


天井の漆喰で彫刻された中⼼飾りは、薔薇や唐草紋様など各室ごとに異なっており、重要度の⾼い部屋のものほど⼤きく繊細で、廊下のものはやや⼩さく感じました。特に⻄客室付属室の薔薇のレリーフは、盛り上げが⼤きく⽴体感と重厚感が感じられました。

 


参考⽂献
国指定重要⽂化財 天鏡閣 HP https://www.tif.ne.jp/tenkyokaku/ 閲覧⽇ 2023.08.08
財団法⼈ ⽂化財建造物保存技術協会『重要⽂化財 天鏡閣本館・別館・表⾨保存修理⼯事報告書』福島県 昭和 58 年(1983)