見学 小柏研究室
2025/09/19
大原邸(大分県杵築市・県指定)見学
文責:若松諒(学部4年)
大原邸
所在地:大分県杵築市杵築207
建立:19世紀中頃
区分:県指定文化財
構造形式:木造、寄棟、玄関部のみ入母屋、茅葺き
大原邸のある杵築市は旧城下町で城跡から西に延びる岬と背後の台地上にあって台地は東西に走る谷によって南北に分断され、北部は北台、南部は南台に分けられる。江戸時代にこの台地上を武家地として区画し、近代以降もその地割を残して住宅街となっている。慶長期の縄張りを基盤に正保2年能見松平家が入った際現在の地割りが完成し、江戸後期・末期に大火があったが地割りを残してその都度住宅が再建されたため地区内には江戸末期の武家住宅が多く現存する。近世武家住宅を中心とした江戸末期から昭和中期までの伝統的建造物を密度高く残す伝統的建造物群保存地区になっている。
その北台に建つ大原邸は武家屋敷ではあるが、玄関や庭園の意匠から上級武士の所有であると考えられる。
所見①
母屋の部屋は公私を区別されており、来客用座敷と次の間は白壁で高麗緑(古来より大切な場所で使われており使う場所に制限があるなど、身分の違いを現していた)の畳。
主人夫妻の寝所である控ノ間など家人用は土色の泥壁で畳縁は模様無しとしている。
土壁は劣化しやすい特徴があるが、全体的にひび割れなど外観上目立ったところがなく保存状態がよかったことで客用の部屋と比べて土壁による部屋の暗さが際立ち、壁の意匠による公私の部屋の空間の区別が明解であった。
所見②
客間側に庭園の中島がある大きな池が設けられ、座敷から池を中心とした庭園を眺められる。客間側の庭園は縁側が多方向に設けられており、池を中心とした開放的な空間と植栽に囲われた閉鎖的な空間を座敷から見ることができる。
一方、居間側の庭園は縁側が植栽で囲われた庭園を囲っており、客間側とは対照的な同一空間を居間全体で共有しているのが特徴的であった。
所見③
茅葺き屋根の保存状態がよく、寄棟であるが玄関部のみ入母屋であることなど建物の平面的に凹凸のある空間であることで写真4のような茅葺き屋根の特徴的な意匠をみることができた。
参考文献
1 金井畳店「高麗紋へり|金井畳店」(2025/09/03閲覧) https://www.tatamiya-kanai.com/service/heri_kouraimonberi/
2 Panasonic「大原邸[大分県杵築市]| すまいの文化を訪ねて | TAMARIE(タマリエ) | Panasonic」 (2025/09/03閲覧)
https://www2.panasonic.biz/jp/tamarie/sumai_no_bunka/0016/
3 杵築市役所 「大原邸/杵築市」(2025/09/03閲覧)
https://www.city.kitsuki.lg.jp/soshiki/7/bunka/bunkazai/bunkazai/1813.html
4 文化庁「杵築市北台南台」(「文化財オンライン」2025/09/03閲覧)