見学 小柏研究室
2025/09/19
大分県立美術館(OPAM)(大分県大分市)見学
文責:佐藤すばる(学部4年)
基本情報
所在地:大分県大分市寿町2番1号(JR大分駅から徒歩約15分)
開館:2015年4月
設計:坂 茂
延床面積:16,300㎡、地上4階建
愛称:「OPAM」(Oita Prefectural Art Museum の頭文字)
建築コンセプトと空間の印象
「街に開かれた縁側としての美術館」「出会いと五感のミュージアム」「自分の家のリビングのような美術館」「県民とともに成長する美術館」という理念のもとに設計されている。
実際に訪れてみると、このコンセプトが館内外の随所に感じられた。館内に入る前から、外に面して大きく開かれたガラス折戸越しに人々の姿が見え、まるで街の延長のように自然に足を踏み入れられる雰囲気があった。
外観・デザイン
・大分県産の杉材とガラスを組み合わせた斜め格子状の木組み外壁
・大分の伝統的な竹工芸をイメージしたモダンな意匠
・南側壁面は開閉式ガラス折戸で、開放時は縁側のような空間に変化
・ガラスカーテンウォールによる透明性の高い外観
訪問時は、木組み外壁の素朴な温かみとガラス面の現代的な軽やかさが印象的だった。格子越しに差し込む日差しが木目を際立たせ、周囲の街並みにもやさしく溶け込んでいた。
空間構成
・1階:高さ約10mの吹き抜けアトリウム、無料展示スペース、カフェ、ミュージアムショップ
・2階:情報コーナー「ブックギャラリー」、カフェ、資料展示
・3階:企画展示室、屋外展示空間《天庭》、竹工芸を思わせる木組天井
・4階:多目的ホール、ワークショップ室
・館内の家具やカフェのインテリアも坂茂によるデザイン(紙管など使用)
1階の吹き抜け空間に足を踏み入れると、自然光がふんだんに降り注ぎ、木とガラスに囲まれた開放的な雰囲気に包まれた。ベンチや家具はどれも柔らかな素材感で、立ち止まって休憩したくなる心地よさがあった。また、ガラス越しに通りを歩く人々の姿が見え、内と外の境界があいまいで、まさに街に開かれた縁側のように感じられた。
建築的特徴
1.地域性の表現
竹工芸を想起させる木組デザイン、県産杉材・日田市産の石材など地元素材の活用
2.開放性と透明性
全面ガラスにより、外から中の活動が見える設計
3.柔軟な空間利用
可動式のインフォメーションやショップで、イベントに合わせたレイアウト変更が可能
4.自然光の導入
木ルーバーや中庭《天庭》による効果的な採光計画
特に3階の天庭は街中にありながら静かで開放感のある屋外空間で、都会の喧騒を忘れて過ごせる場所だった。屋内にいても自然とつながっているような感覚があり、この美術館が「生活の中にある」ということを強く実感した。
坂 茂について
1957年東京都生まれ。クーパー・ユニオン建築学部卒業。
紙管建築や仮設住宅、環境に配慮した建築で国際的に活躍しており、代表作にはフランスのポンピドゥー・センター・メスや東京のニコラス・G・ハイエック・センターなどがある。
OPAMでも紙管を用いた家具や展示什器が用いられており、素材の軽やかさと温もりが、館内の居心地の良さにつながっていると感じた。
まとめ
大分県立美術館は、建築的に優れているだけでなく、訪れる人にとって心地よい存在だった。地域性を大切にしながらも、開かれたデザインと柔軟な空間構成で、市民に寄り添う文化拠点となっていると実感した。
参考
Discover Japan
《大分県立美術館/OPAM》建築家・坂 茂設計の県産材×竹工芸をイメージさせるモダン建築
https://discoverjapan-web.com/article/92427(2025/9/2閲覧)