見学 小柏研究室
2025/12/02
旧植松家住宅(静岡県裾野市・重要文化財)見学
文責:吉川駿平(修士1年)
概要
竣工:1710-1744
所在:静岡県裾野市千福松が窪7の11
重要文化財指定日:1973/6/2
構造形式:桁行八間半、梁間四間、寄棟造、茅葺
旧植松家住宅は静岡県裾野市に位置する農家型民家である。茅葺で正面と座敷周りには葺きおろしの庇が取り付けてある。平面は主屋の南手4間が土間、北手5間に三間取りの床上部を配する。床上部の「ひろま」「なんど」は板敷で、「ざしき」は畳敷とし、土間裏側に石造りのかまどが備えられている。天井は「ざしき」「なんど」張られており、棹縁天井が配される。上屋柱は側柱に比べると非常に太く、中でも土間境の大黒柱は約40cm角である。
所見
旧植松家住宅は、土間まわりの力強く曲がりくねった梁組を配した構造が特徴で、静岡県東部における古い農家建築の姿をよく留めている。平面図からは三間取りの形式を採り、間口の約半分を占める広大な土間と、土間と「ひろま」が一体となり広々とした空間が特徴であることが読み取れる。
また、寄棟造茅葺の簡素な屋根や正面から北側にかけて巡る土庇の他、閉鎖的な外観構成は18世紀初頭の建築様式をよく反映している。
さらに静岡県東部の代表的民家として、旧植松家住宅の構造は隣接県の民家との関連を知る上で貴重であるとされており、地域間の建築文化の交流及び違いを示す重要な事例といえる。
参考文献
文化財建造物保存技術協会『重要文化財植松家住宅修理工事報告書』(裾野市,1974.8)