清水研究室
2016/08/04
『居住文化とミュージアム-ネットワークでつなぐ新しい博物館のかたち 建築計画編-』の開催
2016年8月25日(木)9:00-12:30 福岡大学で、上記の研究協議会が開催されます。
司会 佐藤慎也(日本大学)
副司会 前田昌弘(京都大学)
記録 本間健太郎(東京大学)、森田秀之(マナビノタネ)
1.主旨説明 黒野弘靖(新潟大学)
2.主題解説
- 野外博物館の動向と役割 日本と欧州
早川典子(東京都美術館) - 浮羽まるごと博物館という試み
菊地成朋(九州大学) - 北タイにおける集落保存とアイデンティティ表象 地域社会の生存戦略としての常在型居住文化の利用
清水郁郎(芝浦工業大学) - 世界の移築保存型野外博物館 そのコンセプトとデザイン
岸本章(建築家・多摩美術大学) - 民家野外博物館における建築保存継承とネットワーク
大野敏(横浜国立大)
3.討論
4.まとめ 大原一興(横浜国立大)
背景
世界規模で居住の質が劇的に変化し、地域それぞれに蓄積されてきた居住文化は変容と均質化の波にさらされている。地域の独自性や文化に対するそうした危機的状況に抗うように、現在、世界各地で、既存の民家や集落の野外博物館化やエコミュージアム化が進んでいる。
歴史的な価値のある建築物を移築、保存した野外博物館は、建築物単体の保存のみならず、往時の居住文化の発信にも取り組み、近年では建築の専門家以外にも開かれた学習と交流の媒体となっている。
ヨーロッパに端を発するエコミュージアムの思想は、現在、世界的に広く流布し、各地の居住文化を観光産業に接合するさいの動力になっている。巨大資本を投下した従来の観光ではなく、常在する物的・社会的資源の表象として建築をとらえ、なおかつグリーン・ツーリズムやエコ・ツーリズムとも連動しながら各地で独自の発展を遂げている。さらに、近年は、地域住民が自らの居住文化を積極的・戦略的に利用するケースがみられる。そこでは、行政や外部資本に依存せずに、住民自らが建築物を含めた自文化を対外的に発信する意図が介在することもしばしば指摘される。
このような局面は、これまで研究対象となるばかりであった各地の建築物への新しいアプローチ方法を考えさせる。また、地域社会と一体となった、あるいは地域社会を主体とした、建築学の新しい方向性を指し示すと考えられるだろう。本研究協議会は、広く居住文化の表象と位置づけられるこのような事例を報告し、居住文化の利活用やネットワーク化の可能性、そのメリットはいったいなにかを考えるものである。さらに、そのような議論を踏まえ、建築学における施設計画やフィールドワークといった既成の研究領域内の議論に必ずしもとらわれない、新しい博物館のかたちについて意見を交わしたい。