見学 小柏研究室

2026/05/06

Visit Kiunkaku (a tangible cultural property designated by Atami City and Atami City, Shizuoka Prefecture)

文責:胡鐘毓(修士二年)

所在:静岡県熱海市昭和町4-2

 

 

概要

起雲閣は、1919年に熱海の別荘として建設されたものであり、当時の熱海は政財界人や皇族関係者など、限られた層が別荘を構える特別な地域であった。その後、三代にわたる所有者の変遷を経て、別荘・旅館へと用途を変えながら現在に至っており、近代以降の熱海における別荘文化の変遷を示す貴重な事例である。

庭園は、根津嘉一郎の別邸時代である大正末期から昭和初期にかけて作庭されたものである。約1,000坪の規模を有し、熱海の緩やかな斜面地形を生かした池泉回遊式庭園に分類される。主屋である和館および洋館の前面には芝生と園路が広がり、敷地中央には流れが設けられ、その水が池泉へと導かれる構成となっている。

また、庭園の造成にあたっては、根津自らが関与し、伊豆周辺から選定された庭石が用いられるなど、素材選択に対する強い意識がうかがえる。

 

 

 

所見

本庭園は池泉回遊式庭園に分類されるが、空間構成としては大きく南北二つの領域に分節されている点が特徴的である。

南側、すなわち洋館および西側客室に近接する領域においては、芝生および植栽が丁寧に整形されており、建物内部の視点場から庭園を眺望した際に、遮蔽物の少ない開放的な視界が確保されている。このような構成は、庭園を鑑賞対象として捉える視線操作が意図されたものと考えられる。

 

 

 

一方、北側領域においては高木を中心とした植栽が密に配置され、加えて石橋や階段が設けられることで、高低差を伴う立体的な空間が形成されている。これにより、園路の移動に応じて視界や景観が変化し、回遊行為を通じた体験性が強調されている。

以上のように、本庭園は建築からの眺望を重視した開放的な南側空間と、地形変化と動線によって構成される北側空間とを対比的に配置することで、鑑賞性と回遊性の双方を成立させていると考えられる。

 

 

 

 

参考文献

起雲閣公式サイトhttps://kiunkaku.jp/

熱海市公式サイトhttps://www.city.atami.lg.jp/kiunkaku/index.html