見学 小柏研究室

2026/05/10

起雲閣(静岡県熱海市・熱海市指定有形文化財)見学 その2

文責:宮田優空(学部4年)、宗形優輝(学部4年)、唐仕豪(研究生)

所在地:静岡県熱海市昭和町4-2

 

 

概要

起雲閣は、1919年(大正8年)に当時政界で活躍し“海運王”と呼ばれた実業家内田信也が養母の療養のため別荘として築かれ、1947年(昭和22年)に旅館として生まれ変わった。数多くの宿泊者の中に、山本有三、志賀直哉、太宰治、谷崎潤一郎など日本を代表する文豪達がおり、彼らに愛されたといわれている。

起雲閣は、木造の和館と日本・中国・欧州の装飾や様式を自在に融合させた洋館から構成されており、約1万㎡に及ぶ庭園を囲むように建物が配置されている。館内の各部屋にはそれぞれ名前がつけられており、和館は群青色の壁や釣り床が特徴的な「麒麟」と、2階の「大鳳」からなる。洋館は、アール・デコ調のサンルームを備えた「玉姫」、英国風の暖炉がある「玉渓」、ローマ風浴室を有する「金剛」から構成されている。庭園では、20tを超える「根津の大石」が象徴的な存在となっている。一面に広がる芝生や池のある庭には高低差があり、道も蛇行しているため、散策する人々を楽しませる造りとなっている。

 

所見

 

 

 

見学して特に印象的だったのは、「玉姫」にあるサンルームである。天井のステンドグラスと色鮮やかなタイル床が特徴的で、植物や曲線をモチーフとしたアール・ヌーヴォーと、幾何学的なアール・デコの要素を兼ね備えた空間となっていた。また、洋風の部屋に対峙するかのように窓から日本庭園が見え、和洋折衷の美しさを感じさせた。日光浴を目的とした部屋であるだけに、天井からは心地よい熱が感じられた。

 

 

明治時代の急速な西洋化と異なり、この時代には、西洋文化を受け入れながらも、日本の伝統文化を守ろうとする意識が高まった。その結果、古建築の美しさを再発見し、西洋と日本、両方の美意識を取り入れた和洋折衷の空間が生まれた。また、当時の西洋化は、明治時代の発展を経て、社会に深く浸透した。国家レベルだけでなく、人々の日常生活にも西洋文化や習慣が自然に取り入れられていたことが感じられる。「玉姫」を見ると、細部の意匠や空間構成、さらに和洋の生活習慣の違いが丁寧に考慮されており、多くの工夫を重ねた上で現在の美しい空間が形成されたことがわかる。

 

 

さらに、「麒麟」に見られる群青色を基調とした壁も印象的であった。落ち着きを感じさせる色彩であり、施主の母の静養のために建てられたという背景にも納得できる。床の間は床柱を設けない「釣り床」となっており、開放感を生み出していた。また、部屋には段差がなく、バリアフリーへの配慮がなされており、細かい工夫が施されていると感じた。

 

 

 

参考文献 

起雲閣ホームページ https://kiunkaku.jp/visit/

起雲閣パンフレット

あたみニュース https://www.ataminews.gr.jp/spot/114/