見学 小柏研究室

2026/04/05

旧田中銀行博物館(山梨県甲州市・国登録文化財)見学

文責:藏重直輝(学部4年)

 

概要

 

旧田中銀行博物館(国登録文化財)

山梨県甲州市勝沼町勝沼3130−1

建設:明治30年代 

登録:平成8年(1996)

設計:下山大工の藤村式建築を多く手がけた松本輝殷

  主に学校建築に係わり、明治8年に設計した睦沢学校

登録理由:造形の規範となっているもの

 

田中銀行土蔵(国登録有形文化財)

建設:明治30年以降 

登録理由:国土の歴史的景観に寄与しているもの

 

写真1 外観

 

旧田中銀行博物館は、明治30年代に「勝沼郵便電信局舎」として建設された木造二階建ての擬洋風建築である。大正9年に内部を改修して「山梨田中銀行」の社屋となり、背後には煉瓦造や三階建の土蔵も増設された。山梨県特有の「藤村式建築」の末期にあたり、石積みを模した漆喰の外壁や玄関のベランダなどに洋風意匠が残されている。

銀行業務を終えた後は住宅として転用され、戦時中の疎開の面影などを残す歴史的な建造物として、平成9年に国の登録有形文化財に登録された。その後は勝沼町へ寄付され、建築調査や保存修理を経て、現在は銀行時代の面影を色濃く伝える博物館として公開されている。

 

 

所見

本建物は幾度かの用途変更を経ているが、床面には銀行時代に使用されていた机やカウンターの跡が残されており、空間の履歴を読み取ることができる。また、細部の装飾では、庭の柵に「田中」の文字をモチーフにしたデザインが組み込まれており、独自の高い意匠性が感じられた。木組を見ると、屋根の瓦葺きや内部の柱・梁の組み方には伝統的な和風の技法が用いられている。その一方で、外部の柱や持ち送りには洋風の意匠が施されており、擬洋風建築ならではの対比が感じられる。さらに、2階の和室においては、窓に掛けられた黄色のカーテンが畳の色彩と同化しており、和と洋が視覚的にも違和感なく調和した空間をつくり出している。

また、扉などの建具に絵の具で木目を描く「木目塗り」が施されており、木材そのままの美しさを重んじる日本の伝統と木目をペンキなどで塗る西洋の様式という、「木材に対する解釈や美意識の違い」から生み出された表現手法である。まさに、見様見真似で大工が西洋建築を受容しようとした背景が伺える。

 

写真2 外観塀写真

 

写真3 内観写真

 

 

 

 

参考文献

旧田中銀行博物館パンフレット 閲覧日2026年3月13日

文化庁 『文化遺産データベース 旧田中銀行主屋』 閲覧日2026年3月13日 

     https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/180043 

文化庁 『文化遺産データベース 旧田中銀行土蔵』 閲覧日2026年3月13日 

     https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/113014