見学 小柏研究室

2023/02/20

世良田八坂神社(群馬県太田市)見学

文責:松下裕介(修士2年)

 

今回は、群馬県太田市に所在する世良田八坂神社についてご紹介します。

 

世良田八坂神社の概要

世良田八坂神社は太田市、利根川から1キロほど北側に位置します。由緒は古く、貞観18年(876)に上野新田のほとりに、社を作らば静まるべしと、当所に鎮め奉る、とされています。

社殿は本殿、拝殿、幣殿からなり、本殿は1間社流造、正面向拝付きの建築です。本殿の特徴として、組物や頭貫、脇障子等に装飾彫刻が多く施されている点が挙げられます。

 

また額殿には、北関東有数の彫物師が手掛けたとされる大額が奉納されており、本殿と同様に豪華な装飾彫刻が額に施されています。

更に神輿殿には、大小4基の神輿が納められています。建物上部に「安永九歳庚子六月吉日 武州榛澤郡中瀬邑 石川富之助」とあり、作者と年代が書かれています。神輿は全て、照り起りのある宝形造の屋根と、正面・奥行1間の胴部、基部からなります。神輿の大きな特徴として、内法長押の上に乗る頭貫と台輪が2段設けられている点が挙げられます。

 

見学を通じた所見

今回は個人的な神輿への興味もあり、その見学を主として八坂神社を訪れました。

見学できた神輿4基の内、2基は高さが1メートルを超えるような大きい神輿で、見る者を圧倒する重厚感を与えていました。細部に注目すると、胴部の柱や長押、桟唐戸の桟等に金物が用いられているが、八双金物とそうでないものに分かれ、神輿それぞれの特徴が表れていました。また、軒先に設置されている蕨手の巻き込みが鮮明であり、綺麗なカーブを見ることができました。更に、胴部は正面のみを桟唐戸とし、他面は羽目板で覆われ、神輿の正面がよく分かる構成となっていました。

今回は神輿を目的として訪れましたが、神社本殿を見学すると、その豪華な装飾彫刻に圧倒されました。一般的に北関東地域は近世以降、日光東照宮を中心に豪華な彫刻が施された社寺建築が多いとされています。境内額殿の解説にも北関東の彫刻を手掛けた石原姓の人物について言及されており、本殿と彫物師との関係を想像しました。

 

参考文献

「上野國世良田鎮座 八坂神社」https://www.yasaka-jinja.jp/(2023年2月20日閲覧)