見学 小柏研究室
2026/03/16
旧長谷川家住宅(三重県松阪市 国指定重要文化財)見学
文責:藏重直輝(学部4年)
概要
三重県松阪市魚町1653
江戸中期/1661-1750建設 国指定2016年
桁行30.2m、梁間15.9m、切妻造、桟瓦葺
写真1 長谷川家外観
15世紀末から伊勢で発展した木綿栽培と染織技術を背景に、松阪商人は特産品「松阪縞」を江戸で売り出し大成功を収めた。そのなかでも1675年創業の長谷川家は代表格であり、主人である長谷川は松阪に住みながら書状を通じて江戸の店舗を遠隔経営する手法をとっていた。こうして江戸で築いた莫大な富は松阪へと送られ、主人は本居宣長ら文化人のスポンサーを務めるなど豊かな教養を深めていった。
同時に、その資金をもとに本宅は17世紀後期から土地を買い足すように増改築を重ね、30室以上の主屋や5棟の蔵、美しい日本庭園を備える広大な屋敷へと発展した。現在、長谷川家住宅は商家として国の重要文化財に指定されている。
所見
庭園は間もなく補修が入り整備されるとのことだが、見学時においては、旧有備館などで見受けられるような「冬の時期ならではの風情や良さ」を感じることは難しかった。
写真2 庭
建物は増改築を繰り返した影響により、屋根の重なりや形状が複雑になっている。しかし、既存の建物を直接拡張するのではなく、敷地内に新たな別棟を建てていく形式をとっていた。そのため、複雑な外観とは裏腹に、全体の平面構成や雨落ちの解釈・処理は非常に明快であった。
内部空間においては、同一の室内で多様なデザインの釘隠しを使用したり、手の込んだ欄間や襖を配したりと、豪商ならではの豊かな財力とこだわりが窺える。しかし、空間全体としては自己主張しすぎず、基本的には外部の庭園を引き立てる(庭を主景とする)構成となっていた点が印象的であった。
写真3、4 装飾
参考文献
・「旧長谷川治郎兵衛家」パンフレット
・文化庁 『文化遺産オンライン 旧長谷川家住宅主屋』 閲覧日2026年3月13日