見学 小柏研究室
2026/05/10
旧日向家熱海別邸地下室(静岡県熱海市・市指定有形文化財)見学
文責:角尾風歌、田邉結菜、羽山知歩(学部4年)
・旧日向別邸概要
所在地:熱海市春日町8-37(1712番地7)
構造形式:屋上 木造銅版葺き 二階建て
地下 鉄筋コンクリート造 一階建て
建築年月:屋上 昭和10年
地下 昭和12年
建築面積:1階 146.38㎡
2階 58.67㎡
地下 129.89㎡
・歴史
(写真1 上屋及び庭:修理工事報告書より引用)
旧日向家熱海別邸は、1936年に実業家・日向利兵衛の別荘として建設された建築である。設計には渡辺仁やブルーノ・タウトが関わり、特に地下室はタウトによる日本で唯一現存する作品として知られている。建物は木造の主屋と地下空間から構成され、和洋の要素を融合した特徴的な空間を持つ。戦後は企業の保養所として利用されたが、その後老朽化により存続の危機に直面した。2004年に熱海市へ寄贈され、保存と活用が進められることとなった。現在は重要文化財として保存修理が行われ、一般公開されている。
・概要
(写真2 上屋一階居間:修理工事報告書より引用)
旧日向家熱海別邸は、斜面地に建てられた別荘建築で、地形に沿って空間が上下に展開する構成となっている。地上部は和風の主屋で構成され、周囲の自然と調和する落ち着いた意匠が特徴である。
(写真3 地下室社交室:修理工事報告書より引用)
一方、地下にはブルーノ・タウトが設計したモダンな空間があり、対照的な雰囲気を持っている。地下室は鉄筋コンクリート造で、色彩や光の使い方によって印象的な空間がつくられている。和風の建築とモダンなデザインが同じ建物の中で共存している点が大きな特徴である。また、斜面地を活かした断面的な構成により、視線や動きに変化のある空間が生まれている。
・所見
(写真4 地下室日本間:修理工事報告書より引用)
旧日向家熱海別邸は、建築単体ではなく周囲の自然環境や眺望と一体的に計画された建築であるといえる。特にブルーノ・タウトによる地下空間では、色彩計画や動線、視線の操作によって各空間の性格が明確に設定されており、利用者の体験を意識した設計となっている。また、階段や天井、ベンチの形状、畳の敷き方など細部の操作により、視覚的・身体的な変化が生み出されている点も特徴的である。
さらに、和室と洋室といった異なる性質の空間が連続しながらも、寸法や素材の統一によって全体の一体感が保たれている。これらの点から、本建築は機能性に加えて空間体験の質を重視した設計であることが分かる。
参考文献:
伊豆観光公式サイト「旧日向家熱海別邸」(令和8年4月9日)
文化遺産オンライン「旧日向家熱海別邸地下室」
文化財建造物保存技術協会『旧日向家熱海別邸地下室及び附上屋:保存修理工事報告書:重要文化財』(出版 熱海市2021年12月)