見学 小柏研究室

2025/02/24

船の体育館(旧香川県立体育館)(香川県高松市)見学

文責:岩崎佑亮(修士1年)

 

・概要

 

設計:丹下健三(丹下健三研究室)

竣工:1964

構造:プレストレストコンクリート造

   一部鉄筋コンクリート造

   吊り屋根構造

 

旧香川県立体育館、通称「船の体育館」は、建築家・丹下健三氏が設計し、1964年に竣工した建築物である。和船を想起させる独特の外観と、ケーブルで屋根を吊る「つり屋根構造」により、内部に柱のない広大な空間を実現している。この構造は、国立代々木競技場の原型ともされ、建築史上重要な位置を占めている。

しかし、老朽化と耐震性の問題から、2014年に閉館となり、現在は内部への立ち入りが禁止されている。2023年には香川県が解体の方針を示し、解体に向けた準備が進められている。一方で、建築家や市民からは保存を求める声が上がり、再検討を求める活動も展開されている。

 

 

・所見

現地を訪れると、その圧倒的な存在感に圧倒される。周囲に高い建物が少ないため、遠くからでも独特の形状が目に飛び込んでくる。近づくと、巨大な船が地上に浮かんでいるかのような印象を受け、そのスケール感とデザインに感銘を受ける。特に、エントランス上部から突き出した庇の下部は、格子状の「ワッフルスラブ」と呼ばれる構造で、細部に至るまで丹精な設計が施されていることが伺える。しかし、内部への立ち入りができないため、内部空間の詳細を直接確認することは叶わない。

 

 

外観のデザインは、和船を思わせる曲線的なフォルムが特徴的で、屋根の両端が大きくせり出している。このデザインは、日本の伝統的な船をイメージしており、地域のランドマークとして親しまれてきた。また、建物を支える巨大な柱と縁梁は、複数の巨大なプレストレストコンクリート(P.S)造パーツで組み上げられており、力強さと美しさを兼ね備えている。

 

 

訪問を通じて、旧香川県立体育館が持つ建築的魅力と歴史的価値を再認識した。内部への立ち入りは叶わなかったが、その外観から伝わる設計思想やデザインの美しさは、十分に感じ取ることができた。この建築物が後世に伝えられるよう、保存活動の重要性が改めて実感される。

 

 

 

参考文献

船の体育館 再生の会HP  http://kentaihozon.org/ (2025.21閲覧)