見学 小柏研究室

2022/09/26

大瀧神社本殿及び拝殿(福井県越前市・国指定重要文化財)見学

文責:横溝将也(修士1年)

            

概要

名称  大瀧神社拝殿及び本殿

所在地 福井県今立郡今立町

建立  天保14年(1843)

祭神  国常立尊・伊弉諾尊(大瀧神社)

    川上御前(岡太神社)

 

沿革

 泰澄の開創と伝えられる白山信仰を中心とした神仏習合の大瀧寺として創立され、川上御前を日本で唯一和紙の神・紙祖神として祀っています。戦国大名朝倉氏との結びつき繁栄するが、織田氏との戦いにより堂舎が全て焼失しました。その後歴代領主による紙座の保護を受け、紙座の発展とともに再興されました。

 

建築概要

 伽藍構成は山上の奥院(上宮)と麓の里宮(下宮)に分かれ、奥院には小規模な大瀧神社・岡太神社の各本殿とその前方の簡素な拝殿があります。里宮には拝殿及び本殿、神輿殿、絵馬堂など配置されています。里宮の拝殿及び本殿は、大型の一間社流造の本殿とその前面に位置する入母屋造の拝殿から成り、本殿の屋根を拝殿へ葺き降ろして連続させ一棟とした複合社殿です。本殿と拝殿の間が吹き放しであること、拝殿の間口が本殿の間口と比べやや小さくなっていること、本殿と拝殿の床高の差を浜床と2箇所の木階で処理していることが大きな特徴で、昭和59年(1984)に国の重要文化財に指定されました。

 

所見

 唐門を過ぎると目の前に里宮の拝殿と本殿が視界に入り、まずその複雑な屋根に驚かされます。本殿の正面に入母屋破風、向唐破風を設け、本殿から葺き降ろした屋根を拝殿の屋根に接続させ、入母屋造妻入りで正面に一間の軒唐破風付き向拝を設けています。

 

 このような複雑な屋根を支えるため、各部の収まりも非常に面白いです。流造の屋根から突き出す柱によって本殿の入母屋破風、向唐破風が支えられています。

 

 近くに寄ってみると虹梁や胴羽目などに欅材の木目を生かした緻密で美しい素木彫刻が彫られていることに気づきます。拝殿には鳳凰、龍、唐獅子や菊などの彫刻が彫られており、本殿には許由巣父、黄石公と張良など中国の故事や仙人譚にまつわるものが施されています。

 

 大瀧神社は社殿を担当した棟梁・大久保勘左衛門の思いと人々の信仰心が垣間見えました。

 

 

参考文献

1)    文化庁歴史的建造物調査研究会『建物の見方・しらべ方-江戸時代の寺院と神社-』

  ぎょうせい 平成6年(1994)

2)  若林純『寺社の装飾彫刻 北海道・東北・北陸編』日貿出版 平成25年(2013)