教員メッセージ


      赤堀忍 / Shinobu Akahori


 日本での建築がおかれている状況が変わってきている。戦後、国土が散漫に開発され、都市の密度が思ったほど上がっていない状況の中で、建築家が新しい建築をつくっても必ずしも良い都市・社会環境ができるとは限りません。東京の街を見ればこの半世紀を通して、それは証明されています。今必要なことは都市と建築を同レベルで考えていく状況をつくり、広い認識のもとで建築を考えていくことです。現実に直面したプロジェクトを通して社会を見ていくことが必要です。それは建築を通して都市のあり方を考えていくこと、都市の背景や歴史を考えていくことです。
 社会システムが変化していく中でこれまで通りの建築創造がされていくわけではない。建築自身が価値を持つ。時間が経ち、その価値が失われた時に、その建築が消されるか、それとも形を変えて残り続け、社会に新たな価値を与えることが出来るかが問われます。
 美・用・強が原点とする建築創造から社会の係わりのなかで創造するようなやさしい建築を考えていく。「新しい」は一つの価値であり、また儚いものでもある。価値の読み替えをしていく必要がある。外観は何の変化もなく見えるが、視点を変えることによって新たな価値が生まれてくる。新たな社会的な価値を生み出す建築設計が求められている。美しい、機能的で、丈夫な建物の形をつくる設計からやさしい建築の設計へ。
 新たな価値感の創出、公益性の確立。建築はある特定の人々に対してつくられている。個人・個体の所有権しか認められていない現状ではその人々が必要ないと決めたときに、その建築は新たな価値を確立しない限り、価値を失う。少子高齢化が進み、社会の閉塞感を打破するべく擬似的な経済成長がつくられている中、新たな価値観が求められている。新たな建築を造りだすだけでなく、必要とされなくなった建築を読み替えることによって、その存在価値を生み出すことが出来る。 
 安全で快適な生活空間と、独自にエネルギーを生み出す建築を試行する「やさしい建築設計」、学ぶべきことは日常的な生活の中にある。教科書よりも社会・街に出て学ぶべきです。

担当授業

建築設計3 3年前期 前半、建築設計3A 3年前期 後半、都市デザイン論 3年前期、建築ゼミナール1 3年前期、建築設計論 2年後期、建築ゼミナール2(設計スタジオB)3年後期、フランス建築実習、韓国建築実習、卒業設計