見学 小柏研究室
2025/08/08
西明寺本堂(滋賀県犬上郡甲良町・国宝)見学
文責:吉川駿平(修士1年)
概要
建立:承和元年(834)
構造形式:桁行七間、梁間七間、一重、入母屋造、向拝三間、檜皮葺
所在:滋賀県犬上郡甲良町大字池寺
西明寺本堂は七間堂であり、正面にはそれぞれに蔀戸が吊り下げられている。側面については、前方の三間には板扉が設けられており、それより後方は壁が主となっている。構造的には出三斗を用いた組物が使われており、中備には蟇股が配置されている。蟇股は新旧の様式が混在しているのが特徴であり、鎌倉時代の蟇股は脚が細い。
内部は内陣と外陣に明確に分かれており、どちらも板敷きで仕上げられている。外陣の天井は折上げ小組格天井というめずらしい造りである。建物は和様の手法で統一されており、近畿地方における鎌倉時代和様仏堂建築の優れた例とされている。
(西明寺蟇股)
所見
西明寺本堂は鎌倉時代に建てられたものの、その後に造築等がなされて方5間から方7間に拡張された。梁間断面図面を見ると小屋組み内に梁桁の他に屋根の「破風板」のようなものが残っていることが確認でき、付加の影響が見られる。また側面には禅宗建築に見られる火灯窓が配置され、複数の様式が混ざっていることが確認できた。このように本堂は単一の時代様式にとどまらず、鎌倉時代以降の増改築の過程で多様な建築技法が取り入れられたことが明らかである。木造住宅や社寺建築の小屋組みにこれまで登ってきたが、西明寺の小屋組みは独特である。内部の様子を見てみたい。
(西明寺本堂梁間断面図)
(写真3西明寺本堂)
参考文献(新規ウィンドウが開きます)
・湖東三山西明寺HP https://saimyouji.com/ 閲覧日2025/7/23
・西明寺境内滋賀県国宝建造物修理出張所『国宝西明寺本堂他一棟修理工事報告書』(彰国社,1939.2)
・文化遺産データベースhttps://bunka.nii.ac.jp/db 閲覧日2025/7/23