見学 小柏研究室
2026/04/05
旧高野家住宅(山梨県甲州市塩山・国指定重要文化財)見学
文責:藏重直輝(学部4年)
概要
甲州市塩山上於曽1651番地15
国指定 昭和28年(1953)、平成8年(1996)
建立年代: 19世紀前期(江戸時代後期)
規模・構造: 甲州突き上げ破風造(甲州切破風造)
建築的特徴: 大きな切妻屋根の中央に突上屋根を設け、妻に棟持柱とウダツ柱を建て、化粧貫を幾段にも通すなど妻壁に意匠を凝らしている。2階以上は蚕室で間仕切りの無い空間。突上屋根は2、3階の採光と換気用。
修復・改修歴: 昭和35年に修理工事が行われ、茅葺形銅板葺となった。
写真1 外観写真
山梨県に所在する旧高野家住宅は、江戸時代に幕府御用として薬用植物の甘草を栽培・上納していた歴史から「甘草屋敷」の通称で親しまれている。享保5年(1720年)に八代将軍・徳川吉宗の命を受けて以来、同家は幕府の薬園への重要な補給源となり、敷地内には日本最古の由緒を持つ甘草が現在も残されている。19世紀初頭の建築とされる大型の主屋は切妻造で、南面中央に採光や通風のための二段の「突き上げ屋根」が設けられているのが外観上の特徴である。また、棟まで届く背の高い「棟持柱」を用い、漆喰塗りの妻壁に貫を見せる構造は、合掌造りなどには見られない甲州地方特有の優れた建築美を示している。平成8年(1996年)には主屋に加え、幕末から明治にかけての屋敷構えを伝える蔵や門などの附属施設群や宅地も国指定重要文化財に追加指定された。
現在は茅葺から銅板葺への改修など適切な保存修理を経て、歴史公園として一般公開されている。
所見
妻面中央に立つ棟持柱は、上部3層分の荷重を支えるという構造的な要求から、社寺建築に匹敵するほどの太い寸法となっていた。また、座敷内部においては周囲に太い差鴨居をめぐらせており、部材一つ一つが極めて大きく、力強く安定感のある架構を備えている。しかしその一方で、大黒柱の四方を鉄パイプで補強している状況も見受けられた。これは、部材を極端に太くしたことによる自重の増大や、経年的な構造負荷に対する現代の補強措置であると推察され、巨大な木造建築ならではの課題も垣間見えた。
外観においては、南面する大きな切妻屋根の中央に「突き上げ屋根」を設け、妻面には棟持柱とウダツ柱を立てるという、甲州地方独自の形式が明快に表れている。本来、これほど大面積の屋根を持つ民家は内部の採光や通風に課題を抱えることが多い。しかし、屋根面に開口部を設けて光と風を効果的に取り込む空間構成は非常に合理的であり、住環境の向上に対する古い民家建築からの確かな発展と進化が感じられる。
写真2 甲州切妻造り
ただ訪問時が「ひな飾り」の催事中であった関係で、特徴的な突き上げ屋根を構成する2層・3層部分の内部構造や、その詳細な仕組みを直接確認できなかったので今後の課題である。
写真3 内部写真
写真4 内部写真
参考文献
重要文化財旧高野家住宅 保存修理工事報告書 閲覧日2026年3月13日
甲州市『旧高野家住宅 (甘草屋敷)』 閲覧日2026年3月13日