見学 小柏研究室

2025/02/23

Former Eri Family Residence (Sanuki City, Kagawa Prefecture, National Important Cultural Property)

文責:楊 暢(学部4年)

 

概要:

所在地:香川県さぬき市大川町(移築)

建設年代:江戸時代中期(1661~1750)

構造形式:桁行13.7m、梁間6.9m、寄棟造、茅葺、北面突出部付属

 

 

 

旧恵利家住宅は、香川県に現存する最古の農家であり、大川町によって移築保存されている。香川県東部平野における民家の特徴をよく示す貴重な遺構である。

平面形式は「広間型3間取り」である。本屋の東半分弱に土間、その西側にヒロマが配置される。さらに西手は、南に縁側とトコを備えたザシキが配される。北側に後世増築のツノヤを取付く、正面の東寄りには元便所が張り出す。

屋根は寄棟造・茅葺で、本屋の棟には越屋根形式の煙出しが設けられており、元便所部分は葺き降ろしの形状となっている。外壁は大壁で塗り込められており、片引戸を用いた閉鎖的な外観が特徴的である。

構造について、本屋の桁行は七間、梁間は三間半で、うち二間半が上屋となっている。ツノヤは桁行一間半、梁間二間半であり、西側のみ半間を下屋としている。架構は、建物中央を通る中引梁に向かって側柱から投掛梁を渡し、その上に小屋梁を架けて扠首を組む形式である。

 

 

 

所見:

 旧恵利家住宅は、土壁による外周部と開口部の少なさから、時代の古さが感じられる建築である。平面図からは、ザシキとナンドの境が壁で仕切られている点や、土間とヒロマの境が開放的である点が特徴的であることが読み取れる。また、装飾を抑えた簡素な寄棟造茅葺の屋根や、讃岐地方の民家に共通する「つくだれ形式(軒先まで茅を葺き降ろす形態)」は、17世紀末頃の建築様式をよく反映している。

 

 

参考文献

・文化財建造物保存技術協会 『重要文化財旧恵利家住宅保存修理工事(移築)報告書』(大川町,2001 )