見学 小柏研究室
2024/08/16
Shimose Art Museum
文責:胡 鐘毓(修士1年)
概要
所在地:広島県大竹市晴海2-10-50
敷地面積:46,412.74m2
建築面積:6,228.92m2
設計者:坂 茂
SIMOSEは広島県西部の瀬戸内海に面した滞在型の美術館。水面には8つのボックス状の可動展示棟が並ぶ。敷地中央には長さ180mのミラーガラスの壁が立ち周囲の風景を映し出す。下瀬美術館は2018(平成30)年、丸井産業株式会社の創業60周年を機に構想され、2023(令和5)年3月に開館した。国内外の美術工芸品を収集、保存、調査研究し続け、展覧会企画等の活動を行うことで、広島県大竹市から日本の文化の発展に寄与している。
建築について
海岸線と平行に並び建つエントランス棟、企画展示棟、管理棟。この3棟は、渡り廊下を含めたすべての外壁が長さ190m、高さ8.5mの「ミラーガラス・スクリーン」で一体化されてる。また、海沿いに広がる伸びやかな建築群と世界初の可動展示室も備えた。
所見
エントランス棟、企画展示棟、管理棟
この3棟は美術館の主要な部分で、外観はすべて鏡面ガラス素材でできており、光の屈折と反射によって立体的な空間感覚を生み出すと同時に、ある程度の光のコントロールと熱の調節の効果もある。構造面では、ミラーガラス素材は軽量で施工しやすく、防火・防水性能も高い。建物内装はシンプルでミニマルなデザインを採用している。建物の海岸側にはガラス窓を配し、海の眺めを存分に楽しむことができると同時に、内部の空間感覚を拡大させている。一方、ホールの木造の柱は木の形をしており、その「枝」が天井を形成し、建築と自然の融合という設計コンセプトを強調することができる。
可動展示棟
建物の海側に水盤を設け、その上にカラーガラスに覆われた8つの可動展示室を並べている。展示室の外壁に施されたカラーガラスは、周囲の水面と海の風景を背景に、とてもインパクトのある風景を作り出した。また、長方形の幾何学的な外観は、自然環境に素朴に溶け込んでいる。近代建築の空間と自然環境との相互作用に対するデザイナーの造詣が、このデザインを通して存分に感じられる。展示室の内部とそれを結ぶ廊下は、窓のない小さな真っ白な箱のようだ。その中にいると、まるで外界に邪魔されることなく、自分自身と展示物だけに囲まれているようで、心ゆくまで展示物との時間を楽しむことができる。これは、デザイナーが来場者に伝えたいデザイン言語でもあると思う。
ヴィラ
下瀬美術館は宿泊機能を持ち、館内にある10棟のヴィラは、それぞれ異なる素材やデザイン技法で作られているという。既存の構造を覆し、独自の素材で表現した。海、空、緑三者の特徴と長所を備えて、自然とアートの気配を与える。
参考文献
[1]下瀬美術館公式サイト:https://artsimose.jp/(閲覧日:2024/8/13)